手術前にかける言葉、特に家族が手術を受けるときには、何と声をかけるべきか…。本当に悩みますよね。
自分も動揺してしまうもの
- 頑張って!と、叱咤激励する?
- いやいや、それでは逆効果?
私自身は病棟で働いているので(言語聴覚士です)、付き添いのご家族から相談を受けることも多いです。加えて最近では、看護師さんから「家族の気持ちを和らげたいから」とアドバイスを求められる機会も増えました。
もちろん正解はひとつではありませんが、NGな言葉は明らか。
そこでいつもお伝えしていること、「手術前にかける言葉(手術を受ける家族へ)」を選ぶポイントや文例をまとめました。手術前にかける言葉で、「言ってはいけない」ことも書いておきます。
「手術前にかける言葉」を選ぶ4つのポイント(手術を受ける家族へ)
夫や妻、お父様やお母様が手術を受けることになった・・・。そんな日は、あるとき突然やってきます。まずは、あなた自身が落ち着いて。
そして深呼吸を
それから、手術前にかける言葉を考えていきましょう。
手術を受けるご家族とあなたの関係に合わせ、どんな言葉を選ぶべきか、考えるポイントは4つです。
先に「手術前にかける言葉」(手術を受ける家族への声かけ)例を見るなら、こちら
家族本人の心境を理解する
手術の日を前にして、一番不安を感じているのは手術を受けるご家族本人です。
たとえ気丈に振舞っていても、本音では動揺していない人なんていない。面会に来た家族が帰った後、カーテンを閉めてベッド上で泣いている。嗚咽が漏れないように、歯を食いしばっている。
そんな光景を見てきました
- 本当に治るのかな…という不安
- 身体にメスを入れられることへ、漠然とした恐怖
- 後遺症が出たら…?という暗い未来
- 地震や停電、予期せぬトラブルの心配
手術前にかける言葉は、家族本人の「不安を和らげること」をぜひ第一に考えてみてください。励ますことにこだわらず、肩の重荷が軽くなるような感じ。
不安を半分、ヒョイと持ってあげる感じ
手術を受ける家族本人が不安を口にするなら、まずは最後まで聞くこです。「それはね…」と途中で遮らない。
そして「そうだったんだ」「辛かったよね」と、受け止めて寄り添う言葉を返すと良いです。
一緒に乗り越える(伴走)言葉
手術前にかける言葉は、家族本人を「1人にしない」声かけを。具体的には、「病気・手術を一緒に乗り越えようね」というニュアンスがおすすめです。
そばにいるよ…の雰囲気
というのも、手術後の患者さんからは、こんなコメントをよく聞くのです。
「手術前の晩は孤独だった」
「ひとりぼっちって感じて、実は泣いた」
ま、手術室に入れば、患者さんは実際ひとりぼっち。大勢の医療者(医師や看護師)に囲まれて、患者は自分だけですから。本当に心細いのです。
だからこそ「一緒に乗り越えようね」は、手術前にかける言葉としてアリです。
手術を受ける家族本人へ「大好き」だと伝える
手術前にかける言葉で、これ以上のものはない。これから手術を受ける家族には、どうぞ照れずに「大好き」と伝えてほしいです。これはメールやLINEもぜひ!
好き・大好き・とっても好き・誰より好き
メールだと何度も読み返せるから
病棟で働く日々ではよく感じるのですが、自分のためだけには、ヒトは頑張れない。
放っておけない存在があるからこそ(家族でも、いっそペットでも)、最後の踏ん張りで、手術を乗り越えられます。大好きだと言ってくれるあなたのために、手術を受ける家族は乗り越えて戻ってきます。
手術後の生活をイメージする言葉
手術前にかける言葉は、「手術後のハッピーな毎日」をイメージするものも良いです。
「手術なんてさっさと終わらせて、早く○○したい!」と語る患者さんほど、術後の経過はいいです(病棟勤務での実感です)。
推し活している人も強い
どんなに簡単な手術でも、「私、失敗しないので!」と言い放つドクターX(エックス)でも、その成功は患者さん自身の基礎治癒力があってこそ。
「私は治って、家に帰る!」
手術を受ける家族本人がそう思うような言葉かけは、どんな名医よりも大事です。
【手術前にかける言葉】手術を受ける家族別に文例やメール例を紹介
手術前にかける言葉は、あなたと家族の関係に合わせたオーダーメイドが一番。
それを考えるヒントになるように、手術を受ける家族別に「手術前にかける言葉」例(文例やメール例)を紹介します。
実際に病棟で見聞きした言葉が中心です
手術前にかける言葉・文例・メール例【家族:夫・妻、パートナー編】
夫や妻、あるいはLGBTパートナーは、人生の伴侶となる家族です。手術前にかける言葉は、まずシンプルに「大好き」が伝わるものを。
- 「大好き。だから必ず戻ってきてね」
- 「私・僕がついているから」
相手の心配をフォローしつつ、これまで一緒にいたことを思い出させるフレーズはこちら。これはメールにもそのまま使える文例です。
「治療に専念できるようにしたよ。家のことは心配しないで」
「手術の後は一緒にのんびりしようね。今まで忙しかったもんね」
私が病棟で耳にして今でも覚えているのは、こんな手術前にかける言葉です。
「俺は酒を止めたから、次はアンタがなんとかしてくれ」
(漁師で大酒飲みの夫から妻へ)
「最初の手術より、今回のがずっと簡単だって聞いてるの」
(高齢ご夫婦で、妻の発言:事実はそうでもなかったのですが、元気になって退院されました)
「快気祝いの手配は、もうしてあるから」
(妻から夫へ)
誰にでも使えるとは言えませんが、そのご夫婦には効果テキメンだった「手術前にかける言葉」でしたね。
手術前にかける言葉・フレーズ例【家族:父・母・両親編】
子供の頃にはあんなに大きな存在だったのに、手術前の父・母は、本当に小さく頼りなく見えるもの。でも子供のあなたが隠している動揺は、意外とバレてます。
特に母親は敏感
だからこそ、手術前にかける言葉では、不安はあるけど治ると信じているとシンプルに伝えましょう。
「待っているからね。早く治してしまってね」
「まだ、親孝行してないんだけど」
もし孫やペットがいるなら、その存在もアピールです。推し活相手がいれば、それも良し。間接的な表現なので、父・母に直接言うのが照れくさい時のメール文例としてもおすすめです。
「○○(孫)の入学式で、みんなでご飯に行こう」
「○○(愛犬)が待っているよ。たぶん玄関で」
「○○のコンサート、チケット取っておくね!」
あるいは、担当医の病状説明で「ポジティブな部分」だけを読み上げるのも選択肢としてアリです。もし子供が複数いるなら、親御さんが一番頼りにしている人が対応すると効果は大きいです。
手術前にかける言葉・フレーズ例【家族:兄弟姉妹編】
あなたの兄弟姉妹が手術を受けるなら、手術前にかける言葉よりも、するべきことがあります。
- あなたの兄弟姉妹に大切な人がいるか?
- いるなら、その人との時間を取れるように協力する
兄弟姉妹が結婚しているなら、その夫や妻へ。
独身で恋人がいるのなら、そのパートナーと。
大切な人と過ごせる時間を
あなたの役目は、兄弟姉妹の子どもの相手をしたり、恋人との時間を邪魔されないように病室の入口で見張りなど。そして手術の直前に、「いってらっしゃい」の言葉と笑顔で送りだす。
多くを語らなくても、患者さん本人にはすごく力になる方法。こんな例は、けっこうあります。
手術前にかける言葉・フレーズ例【義理の家族:義父母編】
実の親と同じくらい姑と仲良しな人は、読み飛ばしてください。
私自身は壁を感じる嫁です
義理の父母(特に姑)へ手術前にかける言葉は、なかなか難しい。
あまりに大げさだと「はあ?」と思われ、シンプル過ぎると後でグチグチ言われがちです。
義理両親はめんどくさい
コツは、まず実の息子・娘を前面に立てること。その上で、失礼のない範囲でこんな文例がおすすめです。LINEやメールにも、そのままコピペでOKです。
「退院されるのをみんなで待っています」
「みんなで応援していますから」
あくまで「みんな」を主語にして、あなた自身が「私は私は」と言わないのが無難。
出しゃばらないのが一番
ただし!
もしあなたと2人きりのとき、義父母が手術への不安を口にするなら、ぜひ聞き役に徹してください。血のつながらない人だからこそ、本音を言える状況なのかもしれません。
そのときの会話について、他の親族にはペラペラ話さないようにご注意を!
手術前にかける言葉のNG例!手術を受ける家族に言ってはいけないこと
手術前にかける言葉で、手術を受ける家族本人の不安を和らげるフレーズ・文例には、正解はありません。それぞれの人生と関係性によって、バリエーションは無限大です。
ただし一方で「言ってはいけないこと」は、とても明確です。良かれと思って口にしている方もけっこう見かけますが、患者さんにとっては心をえぐられる瞬間。
具体的に紹介します
手術を受ける家族本人を責める言葉
手術前にかける言葉で、よくあるNGフレーズや文例はこれ。手術を受ける本人を責めるフレーズです。
- 「だから○○するなって言ったのに」
- 「あなたが私の言うことを無視するから」
- 「こっそり夜中に盗み食いするからよ?」
事実かもしれないけど、今じゃな~い!
手術前にお小言を受けたって、今さらどうにもできないです。
患者本人はげんなり…
近い関係の人、特に妻や夫、娘・息子が言いがちなのでご注意を!
手術の失敗を連想する言葉
手術前にかける言葉として、医療者側としてもやめてほしいのが「手術の失敗を連想」するもの。
- 「その手術、成功率は○○%なんだって!よく決断したね~」
- 「ここじゃなくて、△△病院の方がその手術は有名なんだけどな」
- 「その手術でいいの?治療法は何?ちゃんと聞いた?」
成功率○○%という数字は、「手術するかどうか」判断材料のひとつです。決めるときには必要ですが、手術の直前に蒸し返して意味があるのかどうか。
ないです
こんなこと言う人いるの?と思われますか。
これがけっこう珍しくない。
例えば普段は遠方で暮らしているけど、手術と聞いて駆け付けた息子さん・娘さん。ポロっと言っちゃって、患者さん(お父さん・お母さん)が不安になっている姿…、病棟関係者にとってはお馴染みの光景です。
余計な心配をさせる言葉
手術前にかける言葉で、意外と多いのが患者本人に「余計な心配をさせる」もの。
- 「早く治さないと、金がかかるばっかりだ」
- 「オレは毎日コンビニ弁当なんだぞ」
- 「ばあちゃん(姑)、○○(娘)がギャンギャン泣くから参ってるわ」
これ、どれも実話です。全て夫から妻(患者)への手術前にかけていた言葉でした。デリカシーがないですよね。
悪い人ではなさそうだけど
早く退院できるように、私がんばるわ!
そんな返事を期待してのことでしょうか。
ところが現実は、逆効果のことが多いです。手術前の患者さんは、精神的にすごく不安定。多かれ少なかれ、ネガティブ思考に陥っています。
入院すると不眠になる人もいる
入院して手術をすることで、家事ができなかったり、仕事を休んでいたり、義父母に子供を見てもらったり…。「迷惑をかけている」という意識から、どんどん考えがマイナスな方向に堕ちていきます。
で、悲しい気分のまま、手術を受ける…と。
手術前にかける言葉、手術を受ける家族への声かけとしては、いい部分が全然ないです。
【手術前にかける言葉】家族が手術を乗り越えるための魔法の言葉に
家族が手術を受けるとき、手術前にかける言葉には迷いますよね。
本当は「大好き」と伝えるのが一番。笑顔とセットなら鬼に金棒。患者さんの心にスーッと沁みていくのが手に取るように感じられます。
手術前に絶対必要
でも照れくさいなら、せめて「いっしょに乗り越えよう」「待ってるよ」の言葉がおすすめ。あなたの言葉は、神の手を持つドクターよりも、患者さんには必要だとわかってほしいのです。
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